けそのつらつら日記

考えたことをつらつらと記すブログ。書評メインの予定。

「生の短さについて」他二篇 セネカ著 大西英文訳 岩波文庫

【概要・感想】

本書は表題の著作のほかに、「心の平静について」「幸福な生について」の二篇を加えた計三篇から構成されている。著者のセネカ1世紀頃に活躍したギリシャの哲学者の一人であり、徳を最高善とし魂の充溢を求めるストア派哲学の思考法が本書には色濃く出ている。その理想だけにとどまらず、実践をも重んじるセネカが人々に説きたかった内容こそが、表題の「生の短さについて」だ。

どれほど多くの人間が、富や名誉・私利私欲のために時間を費やし自分のために時間を使うことをしないでいることであろう、とセネカは嘆く。そのように生を「浪費」するからこそ生は短くならざるを得ないのだ、と。

本書は今から2000年近くも前に記された書物でありながら、現代社会を強く叱咤するような強い主張が感じられ心に染みる節があった。2度、3度と読む価値のある一冊であると思う。