けそのつらつら日記

考えたことをつらつらと記すブログ。書評メインの予定。

ムダな仕事が多い職場 太田肇著 ちくま新書

【概要】

日本における社会人の労働の効率性の悪さについて社会科学的・歴史的観点から分析したもの。

【感想】

労働の効率性の悪さと聞くとまず真っ先に個人の問題、例えば「○○さんは仕事を進めるのが遅くて納期に間に合わない」「□□さんは注意力が散漫で遅々として作業が進まない」など、が思い浮かんでしまうのが一般的だと思われる。

だが組織論の研究者である著者から見ればそれは企業の問題、さらには日本の戦後経済成長の悪習が作り出した構造的欠陥に帰結すると述べている。

その代表例が、上司が部下の業務管理を必要以上に微細に行う「ミクロマネジメント」だ。過剰サービスの提供に付帯する形で行われるようになった制度であるが、それ自体はより良い業務運営を行う手段であるが、近年では手段が目的と化してしまい業務進行を妨げるという「疎外」構造が出来上がってしまっている。

私自身も一介のサラリーマンとして上記の旨を感じる節は多々あり、個人的には本著のような労働の構造論への理解を各々が深化させることで改善していくべきであると思う。

総じて、社会人が自身の働き方および職場環境について客観的に振り返るための手段として、本著は一読に値する一冊であると感じた。