けそのつらつら日記

考えたことをつらつらと記すブログ。書評メインの予定。

仮面の告白 三島由紀夫著 新潮社

【感想】

久方ぶりの小説。普段は社会科学系や実用書を読むことが多いですが、著名なかつ古くから継続して出版がなされている小説については何らかの示唆に富むものが多いと思っており(あくまで私個人の見解です)、気が向いた際には読むことがあります。

本著は男性として生まれながら女性に対する不能を根底に抱えながら生きてきた主人公の、幼年期から青年期における心情の移ろい叙述する形で進行する小説である。小説である以上フィクションと形式的には見做されているものの、読み終えた私の見解からするととても虚構とは思えないほど生々しく主人公の心情が描写されている。

裏表紙の概要だけ読むと一見性的マイノリティーのものの捉え方をそれっぽく描いたような内容に思われがちだが、いざ読み始めてみると若干難解で古めかしい表現と繊細な描出が相まって主人公の葛藤がリアリティーとして読者の前に現れ押し寄せてくる。

本著は人間が根本的に持つ官能的欲求とは何かについて深く考えさせられる良書であると感じた