けそのつらつら日記

考えたことをつらつらと記すブログ。書評メインの予定。

基準値のからくり 村上道夫・永井孝志・小野恭子・岸本充生著 ㈱講談社

4名の環境学者・リスク研究家(裏表紙では「基準値オタク」と自虐的に評されている)が世界を取り巻く様々な「基準値」の決定プロセスについて述べたもの。

切り口は10点ほどあるが、なかでも「消費期限・賞味期限」と「水道水」の項が非常に興味深かった。先に挙げた2項については身近な例でありながら、基準値決定に至るまでの過程には科学的根拠と世俗的妥協が多分に含まれており神妙な気分になるとともに至極納得させられた。

「基準値」と聞くと、理系の人が取り扱う大変高度な学術的アプローチを経て決定されたものとして縁遠いものと感じてしまう人も多いと思われるが、その背後には日本的な文化や国家・企業の恣意的な取り決めが潜んでいたりすることを知った。

本著は世の中に存在する「数値の取り決め」について考えるきっかけを与えてくれる、おすすめの一冊である。