けそのつらつら日記

考えたことをつらつらと記すブログ。書評メインの予定。

100分de名著 ハンナ・アーレント 全体主義の起源 仲正昌樹著 日本放送協会・NHK出版協会

【感想】

ドイツ出身の政治哲学者であるハンナ・アーレントの記した「全体主義の起源」について、その骨子を分かりやすく解説したもの。NHKテキストでありTV放送の教科書として利用するのが最良の読了方法ではあるが、本著単体で読んでも大変参考にがなる。

1787年に起こったフランス革命をきっかけに従来強く意識されなかった「国民意識」が芽生えたことを発端として国民国家が発展し、またその一方で「帝国主義」の台頭を全体主義の敷衍の一因として挙げている。そんな二律背反の関係にあるイデオロギーが存立するなかで国家としてのアイデンティティが揺らぎ始めたことで「全体主義」発生の土台が醸成され、そこにヒトラーという存在が現れたことではっきりと「全体主義」という概念が形作られた、としている。

この一連の大局的歴史観に基づいた全体主義発生の要因分析は現代においても色褪せる観点ではなく、むしろ外国人の移民問題・インターネット普及によるボーダーレス化が進む中で個人個人が自身の強いアイデンティティを見出しづらい傾向にあると思われる現代においても、常に「全体主義」的思考の萌芽はいたるところに潜んでいるといっても過言ではないだろう。

以上のような見地から、現代社会の今後を論じるうえで本著は非常に示唆に富んでおり、かつ原著者がドイツ系ユダヤ人というまさしく当時渦中にあったといえる人物であることもあり、内容は迫真に迫ったものとなっている。

本著は原著ではないものの、それがゆえにとっつき易い内容となっているため、万人に推薦できる一冊であるといえる。

基準値のからくり 村上道夫・永井孝志・小野恭子・岸本充生著 ㈱講談社

4名の環境学者・リスク研究家(裏表紙では「基準値オタク」と自虐的に評されている)が世界を取り巻く様々な「基準値」の決定プロセスについて述べたもの。

切り口は10点ほどあるが、なかでも「消費期限・賞味期限」と「水道水」の項が非常に興味深かった。先に挙げた2項については身近な例でありながら、基準値決定に至るまでの過程には科学的根拠と世俗的妥協が多分に含まれており神妙な気分になるとともに至極納得させられた。

「基準値」と聞くと、理系の人が取り扱う大変高度な学術的アプローチを経て決定されたものとして縁遠いものと感じてしまう人も多いと思われるが、その背後には日本的な文化や国家・企業の恣意的な取り決めが潜んでいたりすることを知った。

本著は世の中に存在する「数値の取り決め」について考えるきっかけを与えてくれる、おすすめの一冊である。

仮面の告白 三島由紀夫著 新潮社

【感想】

久方ぶりの小説。普段は社会科学系や実用書を読むことが多いですが、著名なかつ古くから継続して出版がなされている小説については何らかの示唆に富むものが多いと思っており(あくまで私個人の見解です)、気が向いた際には読むことがあります。

本著は男性として生まれながら女性に対する不能を根底に抱えながら生きてきた主人公の、幼年期から青年期における心情の移ろい叙述する形で進行する小説である。小説である以上フィクションと形式的には見做されているものの、読み終えた私の見解からするととても虚構とは思えないほど生々しく主人公の心情が描写されている。

裏表紙の概要だけ読むと一見性的マイノリティーのものの捉え方をそれっぽく描いたような内容に思われがちだが、いざ読み始めてみると若干難解で古めかしい表現と繊細な描出が相まって主人公の葛藤がリアリティーとして読者の前に現れ押し寄せてくる。

本著は人間が根本的に持つ官能的欲求とは何かについて深く考えさせられる良書であると感じた

雑談力 ストーリーで人を楽しませる 百田尚樹著 ㈱PHP研究所

【感想】

作家として文学界に名を馳せている百田尚樹氏が雑談における会話相手を楽しませるためのポイントについて述べた本。

雑談のコツが記載されているのは勿論だが、それ以上に著者である百田氏の蓄積している雑学・話題の豊富さに思わず感嘆の声を上げてしまう。すぐに人に話したくなるような話題が盛り込まれているのも本著の魅力の一つであると思う。

簿記2級合格

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11/19(日)に行われた第147回日商簿記検定2級に晴れて合格することが出来ました。

今までいくつか資格を取得してきましたが、なんとなく勉強してなんとなく試験に合格してきた私にとって簿記2級は世間一般の前評判よりも難しいものに感じられました。「簿記は勉強ではなくスポーツだ」と例えられる所以も今ではよくわかります。

 

あまり計画だてて学習しなかったので参考にならないかもしれませんが、備忘録代わりに後日勉強法をつらつらと記していこうかなと思います。

キレる女 懲りない男-男と女の脳科学 黒川伊保子 筑摩書房

【感想】

男女の脳の機能の相違点およびそこから生じる普遍的な男女の感性・行動の違いについて脳科学の観点から述べたもの。すべからく万人に当てはまるわけではないが、(男性の私から見て)女性と話している際に感じることとして思い当たる節の内容が何点もあり説得力を帯びていた。

「どうもあの男性と話すと自分の言い分を分かってくれない」と嘆いている女性や「いつもあの女性と話すとこちらの話が通じない」と不満を抱いている男性も、もしかしたら個人の問題ではなく男女の脳機能の差に起因するものかもしれない。詳しくは本書を読んだうえでご判断されてはいかがだろうか。

世界のエリートが実践している 目のつけどころ ものの考え方 相川秀希著 ㈱キノブックス

【概要】

大学受験生向け進学塾として有名な「早稲田塾」の創始者である筆者が、自身の周囲の優秀な協働者に共通する性格・思考法を見出し、それらを一冊にまとめたもの。

【感想】

本書を読了して痛感することは多々あるが、一番はやはり自身の中に様々な「思い込み」があって、さらにそれに気づいた上でまだ自身も認識できていない「思い込み」があるのだろうな、という一点に尽きる。本著のタイトルでいう「世界のエリート」にはそれがなく、ものの考え方についてとかく自由であることをあらためて思い知らされた。