けそのつらつら日記

考えたことをつらつらと記すブログ。書評メインの予定。

ダメなときほど「言葉」を磨こう 萩本欽一著 集英社

【感想】

お笑い芸人として知らない人はほとんどいないであろう「欽ちゃん」こと萩本欽一さんが記された本である。特に店頭に綺麗にポップ付けされて陳列されていたわけではないが、タイトルになんとなく魅力を感じて購入した。

著者がお笑い芸人として芸能界を生きていきたなかで痛切に感じた「人間の言葉」の重要性について、自身の経験に則って記されている。

特に印象に残ったのが第三章「辛い経験が優しい言葉を育む」である。阪神大震災の経験を結果的に社員教育になったとしてポジティブにとらえるJR西日本社長のお話が印象的な「不幸な出来事を不幸な言葉で語らない」や、過去の成功に執着せず次から次へと挑戦を継続することの大切さを説く「喜びは短く 悲しみも短く」など、弱卒の私にとって含蓄に富んだ内容ばかりであった。文章も読み易く、老若男女におすすめできる一冊であると感じた。

「図解でざっくり会計シリーズ①」税効果会計のしくみ 新日本有限責任監査法人編 中央経済社

【感想】

そもそも税効果会計とは何かから始まり法人税等調整額および繰延税金資産(負債)の仕組みに至るまで、基礎から丁寧に記載されている。基本的に見開きの左ページが図解、右ページに活字での説明という構成となっている。初めに書店で手に取った際は正直「ボリューム(165P)の割りに値段(税込2,052)が若干高めだなあ」と感じていたが、実際に読んでみると値段に見合うわかりやすさを備えており、会計制度の難解さに辟易としている人(私のことです!)にとってもとっつき易く良い一冊であると感じた。

他人をバカにしたがる男たち 河合薫著 日本経済新聞出版社

【タイトル】

他人をバカにしたがる男たち 河合薫著 日本経済新聞出版社

【概要】

健康社会学および脳科学の観点から現代人の「ジジイ化」に焦点をあて論述したもの。

【感想】

能力がないのに妙に偉ぶる上司、日によって不機嫌になり細かいミスについてねちねちと言及してくる先輩、後輩には嫌味や愚痴をきく半面上司にはこびへつらう同僚etc… 社会人であれば誰もが相見える存在ではなかろうか。

このような「他人をバカにしたがる」人間について、そのメカニズムを理系的アプローチから解明を試みているのが本著である。

人間は誰しも現代社会でストレスを抱えており、それに対抗するための自己防衛的な手段として、自己の社会的評価を上げるために上記に挙げたような行動をとりがちである(この手段のことをGRR:Generalized Resistance Resource=「汎抗的資源」という)。これは人間の生存本能の観点から見れば理にかなっている一方、周囲の人間に不快感を与えるなど悪影響をおよぼし社会的活動の前進を阻害するリスクも孕んでいる。以上の事項を踏まえたうえで、そのような行動に走りがちな人間の弱さを認めること、人間とは社会的動物であり他社との共存なしには生きていくことは非常に困難であることを自覚し、物事を前向きにとらえる力を得ることこそ現代人にとって不足しており、身につけるべきスキルなのである。

死ぬほど読書 丹羽宇一郎 幻冬舎新書

【概要】

読書の意義・効果的な方法について著者の経験に基づいて記されたもの。

【感想】

書籍名の内容の効率的なインプット方法や速読法などについて述べた本は数あれど、本書ほど「読書」について真剣に考えさせられるものは数少ないのではなかろうか。その理由は本書の内容が著者の豊富な人生経験に裏打ちされている点に尽きる。

インターネットの定着やAIIoTの普及など情報化が進む中で「知識」と「情報」をきちんと区別して自身の中に取り入れていくことが重要であると再認識できた。

著者は元伊藤忠商事株式会社の社長を勤めた人物である。著者の人生論について興味があることはもちろんのこと、知識を拡充するための動機付けとして本書は読む価値のある一冊であると感じた。

ムダな仕事が多い職場 太田肇著 ちくま新書

【概要】

日本における社会人の労働の効率性の悪さについて社会科学的・歴史的観点から分析したもの。

【感想】

労働の効率性の悪さと聞くとまず真っ先に個人の問題、例えば「○○さんは仕事を進めるのが遅くて納期に間に合わない」「□□さんは注意力が散漫で遅々として作業が進まない」など、が思い浮かんでしまうのが一般的だと思われる。

だが組織論の研究者である著者から見ればそれは企業の問題、さらには日本の戦後経済成長の悪習が作り出した構造的欠陥に帰結すると述べている。

その代表例が、上司が部下の業務管理を必要以上に微細に行う「ミクロマネジメント」だ。過剰サービスの提供に付帯する形で行われるようになった制度であるが、それ自体はより良い業務運営を行う手段であるが、近年では手段が目的と化してしまい業務進行を妨げるという「疎外」構造が出来上がってしまっている。

私自身も一介のサラリーマンとして上記の旨を感じる節は多々あり、個人的には本著のような労働の構造論への理解を各々が深化させることで改善していくべきであると思う。

総じて、社会人が自身の働き方および職場環境について客観的に振り返るための手段として、本著は一読に値する一冊であると感じた。

人生が大きく変わるアドラー心理学入門 岩井俊憲著 かんき出版

【概要】

心理学者として名高いアドラーの教えについて、図を交えつつ平易に解説した本。

【感想】

アドラーについては過去に2冊ほど解説書を読んだ経験があるが、文字の羅列だけでなく図解が豊富なため、パッと見で分かりやすいのが本書の特色である。アドラー心理学については自身の物事の捉え方を考察する上で大変参考になるものであり、本書については心理学についてまったく触れたことがない人でも手に取りやすい一冊としてお勧めできる著作である。

脳内麻薬 人間を支配する快楽物質ドーパミンの正体 中野信子著 幻冬舎新書

【概要】

人間の快楽を司るドーパミンについて脳科学の観点から分泌される経緯・具体的なケースなどについて解説した本。

【感想】

「快楽」と聞くと食欲・性欲の充足、ギャンブルへの熱中などのいわゆる「快感」がイメージされがちだが、本書においては「快楽」について人間の本能的なレベルにとどまらず社会的なレベルの次元まで、快楽を感じる部位である「報酬系」のはたらきによって説明している。

本能的快楽が満たされたときだけでなく社会的快楽が満たされた際にもドーパミンは分泌され報酬系は活性化しており、この現象は対人関係に重きを置く人間特有の現象である。

また換言すれば社会的報酬については上手に利用すれば自身の社会的活動(仕事、ボランティアetc…)のモチベーション維持に貢献するものの、一方本能的快楽と同様それが暴走する可能性も秘めている。近年の「インスタ映え」現象は、他社からの承認欲求を満たすための手段として自身を偽ったりするなど、まさにその代表例と言えるのではなかろうか。

自身の人生における「快楽」の正しい捉え方を認識する上で、読んで損のない一冊であると思う。